研究課題
本年度は、最終年度であるため、前年までの調査研究を踏まえた国立大学財務に関する質問紙を作成し、全国立大学および部局(学部・大学院・研究所)に配布し、比較的良好な回収数が得られた。この回収データをもとに分担して分析を行い、3回にわたって研究会を開催し、国立大学における概算請求過程、予算決定過程、予算配分過程および財務に関する意見を検討した。また、データの解釈を明確にするために、独立行政法人や理事会による大学運営を実施していた補足的訪問調査(独立行政法人として農業者大学校、産業技術総合研究所、公立大学として函館未来大学、理事会運営の事例として琉球大学)を行ったほか、NPO法人などの会計基準、会計監査、行政評価、政策評価に関する理論書の収集を行った。これらの研究活動の結果、国立大学財務運営の定型的なパターンと問題が明らかになってきた。たとえば、予算決定における調整型リーダーシップの優位性、大学計画との非接続性、全学と部局の予算運用における齟齬の大きさ、法人化後の財務に関する危機感などこれからの大学財務に関する貴重な知見が得られた。また、法人型財務の典型例として、アメリカ大学財政の近年の動向についても、カリフォルニアを対象とした学生人口急増期の財政運用を中心に、公立セクターの財務の特徴を検討し、その結果をとりまとめた。これらの成果は、最終報告書に収録した。このほか、オーストラリア、韓国調査などで収集した資料目録を掲載し、今後の研究に資するようにした。