研究課題
基盤研究(B)
本研究の目的は、わが国の小学校に置ける「学級」の歴史的、構造的な特質を踏まえながら、「学級がうまく機能しない状況」がどのようにしてもたらされるかを究明することを通じて、学級を再生させるいくつかの道筋を探り出すことである。本年度の研究実績は次の通りである。1.学級システムの比較研究前年度までの文献研究、現地調査等の成果を踏まえ、諸外国(アメリカ、ドイツ、韓国)の学級システムについて、比較研究の視点から検討を行った。その上で、わが国の直面する「学級がうまく機能し状況」がどのような構造的課題を持っているのかを考察した。2.児童に対する質問紙調査、学級担任調査の実施と分析平成12年度に実施した「学級・学校経営の実態に関する調査」と同じ対象校から抽出した386校の小学校5年生を対象に、集合自記式質問紙調査を実施した(平成14年12月)。質問内容は、学級の様子、友人関係、教師との関係、家族関係、規範意識、自己認識、イライラ感など、37項目を設定した。同時に、学級担任に対する質問紙調査を実施し、担任の属性や学級、学校の属性について質問した。295校より回答があった(回収率:76.5%)。今回は、現在の小学校5年生の特徴を明らかにすると共に、学級の様子を示す指標を点数化し、「学級の健康度」という指標に置き換え、学級を単位として「授業がうまく機能しない状況」について分析を行った。その結果、この問題は、地域の特徴や学級規模だけに起因するのではなく、多様な要因が複合的に絡み合っていることが改めて確認された。さらに分析した結果、(1)授業のわかりやすさ、(2)教師の学級経営能力、(3)規範意識という3つの視点から、「授業がうまく機能しない状況」を読み解くカギがあることがわかった。すなわち、子どもたちは教師に対して、授業改善を図ることと公平心を持って問題解決に的確に対応することを求めていることが明らかとなった。そして、規範意識の形成には家庭での教育力が影響していることがアンケートの分析からわかった。このことは、学校だけではなく、家庭教育の重要性を指摘していると言える。3.最終報告書の作成以上の成果を最終報告書としてまとめた。そのため、最終報告書は、第1部は、小学校5年生の調査分析を、第2部は、諸外国の学級経営、第3部は文献解題から構成されている。
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