研究課題
基盤研究(B)
本共同研究の第一の目標であった、滋賀大学経済学部附属史料館所蔵「中井源左衛門家文書」の史料目録作成作業については、約2万点の史料一点づつの明細調書を作成し、分類項目を検討して目録集としてまとめることができた。これにより、代表的「近江商人」として学界に周知されていた中井家の伝存史料の全体を知ることができ、斯学の研究に一層寄与することは疑いを入れないものと思われる。研究過程で、従来知られていた家系に漏れていた人物を発見したこと、出店関係で未知の情報を得たことは、研究史上で新しい発見であった。また、他の商家に残された史料と比較することにより、中井家には閉店された出店関係史料も一緒に伝来したことが明らかとなり、それは他の商家と大きく異なる史料伝存のあり方であることが浮き彫りとなった。一般的には、出店史料は出店が所在した地に伝わり、閉店すればその多くは散逸してしまっているため、本店・出店を結んだ商業活動の実態を分析する上で限界があったが、中井家はその欠を補う上できわめて有意義な商家であることを、改めて確認することができた。しかし、研究のもう一つの目的であった、商家文書の構造的特質の解明、という点では、課題を多く残したといわざるを得ない。それは何よりも、史料の整理・調査書の作成に集中せざるを得ないという問題を生じたからである。予想以上の史料残存状態は、詳細な内容分析に至る時間を与えはしなかったのである。それゆえ、近世・近代と続く商家として史料分類学上で一つの典型例を示すという程度までの成果を上げることはできなかった。この点、今後の課題とせざるを得ない。
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