研究概要 |
1 現在の二次林にどれだけのクリが存在するか: 昨年までの結果に,宮城県鳴子町の東北大学農学研究科付属農場での調査結果を加え,胸高断面積合計は22.3〜58.6m^2/ha,平均38.7m^2/ha,直径10cm以上のクリが296〜533本/haという値が得られた. 2 二次林をどのように管理,利用すればクリは再生するか: 前年度設置した石斧およびチェーンソウによる皆伐区での1年後の萌芽情況を調査し,クリの萌芽再生はチェーンソウ区で56%,石斧区で54%とほとんど変わりがないこと,実生苗の発生はチェーンソウ区で1350本/ha,石斧区で450本/haで大きく異なった数字の上では大きく違うが実験区が少ないため検証できないことから,新たな実験区をふやした. 3 クリの実の生産量 愛知県小原村でクリ21〜24本について実の生産量(落下量)を4年間にわたり測定した.その結果,(1)それぞれの木の落果数は個体差が大きく、また同じ木でも年によって大きく変動すること,(2)実1個あたりの平均重量は個体により、また年により異なっていること,(3)調査木の実の生産量(重量)の年ごとの変動は全く同調していない,ことが分かった 4 現生の自然林および遺跡出土のクリの遺伝的多様性の解析: クリの遺伝的多様性解析のため,多型性の高いSSR(Simple Sequence Repeat)マーカーの開発をおこなった.このマーカーを用いて,青森市内,津軽半島,下北半島,北海道小樽市,松前町,南茅部町の集団間の比較を行った結果,1)それぞれの集団では高い遺伝的多様性を保持していること,2)下北と津軽の集団間の遺伝的類似度が特に高いこと,3)津軽,下北,青森市,南茅部の集団では近い遺伝的関係にあることが,示唆された.
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