研究課題/領域番号 |
12410120
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
藤田 實 関西大学, 文学部, 教授 (40029658)
|
研究分担者 |
入子 文子 関西大学, 文学部, 教授 (80151695)
物部 晃二 関西大学, 文学部, 教授 (80067652)
今西 雅章 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (90084029)
吉中 孝志 広島大学, 大学院・文学研究科, 教授 (30230775)
山田 由美子 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (50200754)
|
キーワード | シェイクスピア / グローブ座 / イコノロジー / 演劇空間 / メランコリー / 視覚的要素 / 古典的柱式 / ルネッサンス |
研究概要 |
平成14年度における上記研究課題での各研究分担者の研究の特質は、ルネッサンスにおける文学・演劇が哲学・宗教・政治・社会と関係をもつ側面で、図像を媒介とする表現が中枢的な位置を占める事実をあきらかにしてきたことである。図像の用法にたいする柔軟で微妙な作家の姿勢が、そのままその時代の権力にたいする作品の性格姿勢に反映して、そこにイコノロジー、つまり図像解釈の微妙な動きや変化が生じてくる。研究分担者吉中氏は、17世紀詩人マーヴェルの詩の題材の中に、当時の政治と宗教のプログラムが複雑に組み込まれ、作品が内蔵する言語のイメージ自体が図像学的解釈になじむことをあきらかにしてきた。山田氏は、17世紀のスチュアート朝時代の仮面劇をベン・ジョンソンとイニゴー・ジョーンズが協力して制作したケースを検討し、図像を仮面劇の舞台に構成したジョーンズが、プラトン主義的な思考と感性の表現に傾き、ベン・ジョンソンは文学の理論としてアリストテレスを奉じていたことが、そのまま両者の当時の政治的立場の表現であったと考えられるとしている。さらに今西氏は、古代ギリシャ・ローマの神殿や劇場の精神をある面で再生・復活させたのがエリザベス朝の劇場であって、本質的にritualisticでemblematicな特徴を図像学的にその演劇空間の構造に取り込むのに成功したとする。入子氏はアメリカ19世紀の作家ナサニエル・ホーソンの作品の中では、イギリス・ルネッサンスの図像がアメリカ植民地時代の文化表象に「メランコリー」の図像が果たした役割に注目してきた。藤田は以上の各研究分担者と連絡をとりつつ、ルネッサンスの建築と絵画のなかに、古典的柱式の列柱の図像的価値および機能を探り出し、シェイクスピアの演劇では、とくにグローブ座の舞台正面壁(stage facade)と方形の張り出し舞台および天蓋を支える古典的柱式の2本の柱が構成する舞台の図像に注目し、イコノロジカルな解析を進めてきている。
|