研究課題/領域番号 |
12410123
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
松本 道介 中央大学, 文学部, 教授 (70055143)
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研究分担者 |
三富 明 中央大学, 文学部, 教授 (80157560)
野口 薫 中央大学, 文学部, 教授 (90102889)
前野 光弘 中央大学, 文学部, 教授 (50055183)
高橋 慎也 中央大学, 文学部, 教授 (60171493)
DETHLEFS H Joachim 中央大学, 文学部, 教授 (60256005)
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キーワード | 日独文化交流史 / 日欧文化交流史 / 文化交流史 |
研究概要 |
本年度はこれまでに構築したデータベースを基礎として、日独文学・日独文化交流史の全体的特徴を明らかにすることを研究の中心とした。研究分野としては特にドイツ文学、ドイツ児童文学、ドイツ映画、ドイツ美術を対象とした。具体的には日本におけるドイツ文学翻訳史のデータベースをWebデータベース化し、その検索機能を用いて1880年〜1995年までの翻訳総数の推移、作家毎の翻訳点数の推移、作品毎の翻訳点数の推移、出版社毎の翻訳点数の推移などをグラフ化し、こうした推移変動の要因を社会背景、メディア史との関連から明らかにしていった。その結果、日本におけるドイツ文学の受容には二つの世界大戦が深くかかわり、第一次世界大戦と第二次世界大戦の直後に受容の急激な増加見られることがデータ的に明らかになった。また人口動態の推移によって受容される作家・作品も相互連関的に推移していることも明らかとなった。ドイツ児童文学についても同様の結果を得ることができた。ドイツ映画に関しては戦前の受容のほうが戦後の受容よりも盛んであったこと、戦後は50年代と80年代前半に受容のピークがあることがデータ的に明らかとなった。その要因としては文化作品を創造し伝達する媒体が20年代と50年代に言語から動画へ転換したことが指摘できる。また社会批判的かつ前衛的な戦後ドイツ映画が70年にドイツで台頭したのを受けて80年代にいわゆる「ニュー・ジャーマン・シネマ」ブームが生じたことが、日本におけるドイツ映画受容を促進したことも指摘できる。つまりメディアの転換ばかりでなく新たなメディアを用いた優れた作品の登場が日独文化交流を促進するのである。ドイツ美術の受容史のデータからは、戦後ドイツの現代美術の受容が80年代から特に百貨店附属美術館の展覧会によって促進されたことが明らかとなった。また90年代後半以降の経済的不況によって百貨店附属美術館の閉館が相次ぎ、ドイツ美術関連の展覧会も大きく減少している点も明らかとなった。 以上のような研究結果をまとめ、最終的に報告書としてまとめた。また研究成果を基にしてアメリカの3大学、韓国の2大学の研究者を招いての国際シンポジウムを中央大学で開会し、大きな成果を挙げた。
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