研究概要 |
本研究では、グローバリゼーションの時代における「固有文化」の現状と将来を比較文化論的に考察することを行った。グローバリゼーションは、主として経済の領域における「世界標準」の達成という位相で語られることが多いが,文化の領域では画一化の危険が語られ,とりわけ「アメリカ化」という意味で理解されることがある。こうした流れの分析のために、本研究は日独の思想・文学研究における「アメリカ・モデル」の位置づけとそれぞれの自文化の伝統との関係を中心的な考察対象とした。その枠組みのなかで、個々の研究分担者が行った研究は以下の通りである。 岡部:「宗教と世俗化」という問題に関してグローバル化の問題を考察した。特にドイツと日本における固有の宗教的伝統が現代の思想に与えている影響を中心的に見た。その成果として、東京大学・教養学部における連続講義とその連続講議をもととした論文集『語りえぬものからの問いかけ』(講談社より刊行)を編集・執筆した。 北川:ハイデガー哲学の研究という範囲内で、日独における研究スタイルの違いを比較し、特に、「政治的なもの」というテーマがどのように位置づけられているかを見た。その際に、アメリカにおけるハイデガー研究が現在もっている影響力にたいして、それぞれの問題設定がどのように異なった解釈枠で受容されているかを中心的に考察した。その成果としては、2002年6月にヴッパタール・ハイデガー国際学会における発表「ハイデガーと地政学的方向付け」を行った。また、図書『ハイデガー-存在の謎について考える』(日本放送出版協会)を刊行した。
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