研究課題
事業者消費者間の電子商取引におけるルールのあり方について、前年度の総論的分析とこの間の「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律」の成立等をふまえ、比較法的な研究を中心に作業を進め、下記の成果を得た。1.電子商取引における約款の組入に関しては、直接的な規定の存在しない我が国においても、契約の成立、有効性の問題に関連して、どのような表示方法が適切かを判断する必要があり、ドイツ約款法2条(改正ドイツ民法305条)の約款組入要件と実質的に同様のルールを実現することが妥当であること、それは意思表示の解釈によって可能ではあるものの、その要件をより明確にしていくことが求められることが確認された。2.EUの通信取引指令を手がかりとして、(1)取消撤回までの法律状態の性質、(2)撤回権等が認められるべき取引の形態、(3)撤回の認められる期間と起算点について検討が加えられた。(1)については、比較法的には、浮動的無効と浮動的有効という2つの考え方があるものの、我が国において浮動的無効構成をとる積極的理由は存在しないという分析に至った。(2)については、通信販売業者の任意のサービスとして提供されている解除権の留保を法的ルールに位置づけることの妥当性が検討され、(3)については、情報提供義務との実質的関連性を実現することの必要性が確認された。3.個別的検討の前提ならびに電子商取引に関する規律のあり方をさぐる素材として、ドイツ債権法改正に伴う電子商取引指令の国内法化の詳細を分析した。その結果、電子商取引指令のうち情報提供義務の基本的な部分のみが民法典の中に組み入れられ、その他の部分の多くは、大幅に改正された情報通信サービス法の中で規定され、さらに、民法に基づく情報提供義務に関する規則の中に個別的な情報提供義務を取り込むことで対応していることが明らかにされた。
すべて その他
すべて 文献書誌 (1件)