研究概要 |
本研究の実施期間中,東ティモールをめぐる内外状況は急激かつ重要な変容をとげた。1999年10月に発足したUNTAET(東ティモール国連暫定・行政機構)の下で,国際管理をうけつつ,本年5月の正式独立の準備を進めている東ティモールであるが,その脱植民地化の前途にはきわめて困難な課題が山積し,また同地をめぐる国際環境も対インドネシア,オーストラリアとの関係をはじめ不安定要因も顕著である。 本研究は,こうした東ティモール「国民国家」形成をめぐる内外の諸課題を,1976年以降四半世紀におよび継続したインドネシア支配からの「脱植民地化」(勿論,それに先立つ五世紀近いポルトガル植民地支配にも留意しつつ)に焦点をおきつつ分析した。国際的にも先行研究が十分とはいえない東ティモール現代史という領域ではあるが,各メンバーが,それぞれ東ティモール,インドネシア,オランダ,ポルトガル,タイ国等での資料・インタヴュー調査を通じ各自の研究課題を掘り下げることが可能となった。これらの調査研究を通じ明確となった論点を箇条的に指摘するならば,以下のとおりである。(1)外観的には,一個の国民国家が誕生することになるが,そのナショナル・アイデンティティは,インドネシアという「共通の敵」が消滅した今日,いかなる形で結節点を見出していくか,きわめて不透明である,(2)より具体的には言語をめぐり,何語で「共通意思」を確認していくのか,についてもポルトガル語,インドネシア語,英語,テトゥン語等が提起されるが,最終的決着には程遠い,(3)脱植民地化にとり不可決な経済的自立の見地からみても,資源に乏しい同国が対外的援助に依存することは不可能にもみえるが,それが新たなる従属関係をうみ,(4)さらにはこれらの諸問題をめぐり再び国内が混迷化し,ひいては周辺地域の国際関係の不安定を惹起する可能性も考慮に入れる必要性がある。以上
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