研究概要 |
本年度は,改めて『日本諸会社役員録』の中で,既にデータベース化している明治31年と40年のデータを最終的に,全数チェックを行った。その際,入力したデータのチェックや修正を行うと同時に,原資料にはない産業分類について,大きな試みを2点行った。第1点は,明治期から平成期に至るまで,なるべく産業構造の分類を変更させないように,業種分類を作成したことである。これは,明治期から大正期,昭和戦前期,昭和戦後期,そして平成期に至るまで,経済の変化がどのような産業構造を伴って生じたのかを烏瞰出来るためである。第2点は,産業構造の中に,在来産業と近代産業を分けたことである。これは,これまでの近代化の過程で近代産業の興隆と同時に,それまでの在来産業がどのような実態であり,またいかなる変化を遂げたのかという研究に対して,資料的な基礎を与えるものとなる。 このデータベースは,数量的なデータベースだけでなく,人物名,会社名,役職名など文字情報を通じたデータベースであることに特徴がある。そのために,旧字を新字に変更する一方,人物の特定に多大の時間と労力を投じた。これは,原資料自身が,同一人物であっても異なった表記をしている場合があり,また同姓同名であるが異なった人物であるケースを特定する,という作業のためである。この作業を通じて,すべての入力データにID番号を付した。 本年度のもう1つの成果は,当時の民間における第1の近代産業である綿紡績産業を対象として,明治31年と40年の株主名簿を作成したことである。これは,株主として氏名,所有株数が分かり,上記の企業役員との関係から,株主と会社役員との関係が,綿紡績産業で明らかになるデータである。
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