本研究のテーマは、連結企業集団における事業組織再編と管理会計システムとの関連の実証研究である。連結決算を行う企業集団の親会社が、多角化した種々の事業や経営職能を社内事業部としたり子会社としたり独立の会社として分離したりするに当たっては、どのような業績評価指標によって判断すればよいか、またそれら再編した個々の組織単位の業績を評価するにはいかなるシステムを採用すべきであろうか。この問題について平成12年度は主として理論的な研究を行った。 本研究は平成12年度から平成14年度の3年間にわたる研究であるが、その初年度である本年度は次のことを行った。 (1)企業価値を重視する経営について、株主価値とキャッシュフローの関係、キャッシュフローと経済的利益の関係、経済的利益としてのEVAやオールソンモデルとの関係を考察した。この結果、株主価値重視の目的から企業組織を再編するには、経済的利益指標を高めるような再編であるべきことを命題として明らかにした。 (2)さらに、企業組織再編にとって組織経済学における市場の「取引コスト」と企業内の「管理コスト」の観点から、企業規模拡張や停止の理論を考察した。 (3)過去に行った質問票調査データを使って、経営管理職能やサービス職能を本社に集中する程度が低い企業については、事業部長の業績評価指標として「管理可能利益」がよいか、「本部費・共通費配賦後利益」がよいかを検証した。 (4)グループ企業集団の事業別業績評価と地域別業績評価のあり方について、松下電器産業株式会社の事例をケーススタディした。
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