研究課題/領域番号 |
12430031
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
斎藤 静樹 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (80107482)
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研究分担者 |
大日方 隆 東京大学, 大学院・経済学研究科, 助教授 (20224305)
桜井 久勝 神戸大学, 大学院・経営学研究科, 教授 (10127368)
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キーワード | 会計基準 / 情報価値 / バランスシート・アプローチ / 時価会計 / 比較可能性 |
研究概要 |
金融資本市場における会計情報の利用目的を検討し、特に事後的に測った純利益の情報が投資家の予想形成にフィードバックされる反復的なプロセスにてらしてその情報価値を分析した。そこでは、経営者が自ら優位な情報を投資家に伝えるという-最近の会計基準が軽視する-ディスクロージャー制度の役割が、会計情報のあり方を決める基本要因であることが確認された。 その観点からみたときの会計情報の有用性は、投資家が企業のキャッシュフローを予測するという目的への適合性(レリバンス)と、それをクロス・セクションや時系列で比較できる信頼性ないし比較可能性との、両者のバランスのうえに成り立っていると考えられる。目的適合性よりも比較可能性を強調する近年の国際的な会計基準は、その点で情報の有用性を損なう心配がある。 そうした危惧をより具体的に分析するには、画一的で比較可能な資産・負債の評価を強調するバランスシート・アプローチが採択されたあとの会計諸基準を取り上げて、それぞれの内容を詳細に検討してみる必要がある。本年度の予備的な作業の結果では、重要な基準の多くがそのスローガンに反して必ずしも実現利益の概念や発生および対応のルールを放棄せず、むしろ会計情報のレリバンスを支えてきた基本原則を維持しているようにみることもできた。 こうした成果の一部は、2回にわたるミニ・カンファランスで報告・検討されるとともに、日本会計研究学会の年次大会においても報告された。来年度にはその作業をさらに具体化して、時価会計の適用範囲といった現行会計基準の先端的な難問を検討することにしたい。
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