研究概要 |
複素積分の研究は,主に代表者により行われたが,ねじれホモロジーに対する交差数およびその数理物理への応用に大きな発展があった. 物理的に意味のある相関函数は一価函数であるが,共形場理論では,正則函数と反正則函数との積の和で表されることが知られている.この正則部分が共形ブロックと呼ばれる多価函数である.いっぽう,共形ブロックを貼り合わせて相関函数を実際に導いたのはDotsenko-Fateev(1984年)であるが,その後の進展は殆ど無い.彼らは要所要所で作業仮説を置きながら論を進めており,「どうして矛盾無く求まったのか良くわからないが,それを明らかにする一般的な定理があるに違いない」という趣旨のことを述べている. 代表者が協力者・吉田正章と共に得た結果はこれに回答を与えるもので,相関函数は交差数理論に現れる不変エルミート形式そのものであるということである. (論文は「Intersection numbers of twisted cycles and the correlation functions of the conformal field theory」(with M.Yoshida) Kyushu Univ.,preprint Series in Math. 2002-?.) その他の結果をいくつか箇条書きする. 分担者・高田はJones多項式の複素積分による表示を介することで,体積予想をサポートする数値実験による結果を得た. 分担者・黒川は多重三角函数の複素函数論的研究を行い,ゼータ函数のガンマ因子や特殊値表示などの結果を得たほか,リーマン面におけるカシミール効果を定式化し表現論的手法を用いて計算した. そして,分担者・金子は二階の微分方程式に従う保型形式($SL_2(Z)$!)の新たな系列を発見した.
|