研究概要 |
1 べき乗の形の非線形項を含む非線形熱方程式においては,指数がある値を越えると解の構造が急激に変化する.この研究では,指数がある臨界値を超えたときに,定常解の大域的安定性を示した.また,その応用としてきわめて複雑な振る舞いを示す解の存在や,非有界大域解の存在を示した.さらに,解の増大度が初期値の無限遠での減衰率から決まることを明らかにした. 2 二つの勾配系を歪対称に結合した歪勾配系という概念を導入し,その基本的性質について調べた.特に,定常パルス解の安定性や周期定常解に対するEckhaus不安定性の基準を得るとともに,定常解に対する変分的性質と安定性の関係を明らかにした. 3 反応拡散系のある種の極限として得られるshadow systemと呼ばれる縮約系に対し,安定解の空間的構造について調べた.無限次元力学系の理論を拡張することによって,1次元領域においては安定解は空間的に単調なものに限ることを示した.また,非局所的方程式の理論を適用することによって,ある条件のもとで高次元へ拡張した. 4 (時間周期的な非線形項を持つ反応拡散方程式においては,ほとんどの解は周期解に収束するが,その周期は非線形項の周期と必ずしも同じではなく,その整数倍になる可能性がある.このような長い周期を持つ解のことをを分数調波振動解というが,どのような場合に安定な分数調波振動解が存在するかは,系のダイナミクスを明らかにする上で重要な問題である.この研究では,任意の高次元領域に対し,空間依存する非線形項をうまく選ぶことによって,安定な分数調波振動解が構成できることを示した.
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