研究分担者 |
小原 敦美 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教授 (90221168)
江口 真透 文部科学省, 統計数理研究所, 教授 (10168776)
広田 良吾 早稲田大学, 理工学部, 教授 (00066599)
辻本 諭 京都大学, 情報学研究科, 講師 (60287977)
太田 泰広 広島大学, 工学研究科, 助手 (10213745)
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研究概要 |
平成13年度は本科研費の援助のもとで,1件のパソコン購入,18件の研究発表と研究打ち合わせ国内出張,2件の研究発表外国出張を行った.具体的な研究活動としては,公開の「関西可積分系セミナー」を平成13年度は9回開催した.さらに,平成13年6月15日〜17日大阪大学蒜山セミナーハウスにて「可積分系合宿セミナー」を,平成13年7月2日〜4日京都大学数理解析研究所で太田を研究代表者とする「可積分系研究における双線形化法とその周辺」研究集会をそれぞれ開催した. この研究課題に関連して平成13年度には次の進展があった.中村のグループでは,重力場のケプラーの2体運動の方程式の離散化を考察した.これはこれまで厳密な意味で周期軌道を保つケプラー運動の計算スキームは見つかっていなかったためである.時間変数を一般化座標ととらえ,ハミルトン関数(エネルギー)のレビ・チビタによる正則化変換を経て,運動方程式の非線形性を時間変数に負わせて,2次元調和振動子のエネルギー保存離散化を行うという手法を開発した結果,ケプラー運動のエネルギーや角運動量だけでなくルンゲ・レンツベクトルをも保存する離散化に成功した.各保存量を厳密に保存する理想的な差分スキームであり,差分ステップの大きさによらず離散ケプラー運動の解は元の楕円軌道を離れることなく周回する.もちろん,初期条件によっては,放物線軌道をも正確に再現する. また,太田は離散系の可積分性を判定する方法として,特異点閉じ込め解析と代数的エントロピーを併用する方法を提唱し,その効率性を確かめた.さらに,トロイダルリー代数から誘導されるソリトン方程式のKPフローの部分の離散化を行ない,新しい可積分微差分方程式を構成しその解の性質を調べた. 一方,小原は算術調和平均のアルゴリズムが定義される正定値行列空間を対称錘の空間上に拡張し,これらの平均演算が測地線の中点を定めるなど対称錘の空間の情報幾何構造を論じた.
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