研究分担者 |
長澤 壮之 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70202223)
小薗 英雄 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00195728)
高木 泉 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40154744)
中西 賢次 神戸大学, 理学部, 助手 (40322200)
太田 雅人 静岡大学, 工学部, 助教授 (00291394)
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研究概要 |
非線形波動方程式の解の正則性と方程式の幾何学的対称性の間には,密接な関係があることが知られている.特に,相対論的非線形波動方程式に対しては,KlainermanとChristodoulouによって導入された,零条件(null condition)が重要な役割を果たすことが,最近の研究で明らかになってきた.古典的場の理論(classical field theory)に現れる,Maxwell-Dirac方程式やYang-Mills方程式は,相対論的非線形波動方程式の典型例であり,零条件を用いた解析により研究は大きく進展した. 今年度は,素粒子間の弱い相互作用を記述する古典的モデルであるDirac-Proca方程式に対して,初期値問題の時間大域的可解性を研究した.具体的には,Dirac方程式として,質量が0もしくは近似的に0と見なせるスピン1/2のフェルミ粒子(たとえば,ニュートリノ)の場を記述するものを考えた.また,Proca方程式は,質量を持つスピン1のベクトルボソンを記述する方程式であり,大雑把に言って質量項の付いたMaxwell方程式であると考えて良い.しかし,質量項の存在によりゲージ不変性が壊れるため,Maxwell方程式の場合にしばしば行われる,ゲージ変換を用いた解析方法を適用することができない.このため,Dirac方程式とProca方程式の相互作用を,より精密に調べる必要がある. 今回,Dirac場とProca場の相互作用が,湯川のベクトル型と擬ベクトル型相互作用の1次結合で表現できるとき,Proca方程式が零条件を満たす構造を持っていることを示した.さらに,この事実を用いて,滑らかで小さい初期値に対し,Dirac-Proca方程式は時間大域解を持ち,その解のDirac場の成分とProca場の成分は,それぞれ摂動のない自由なDirac方程式とProca方程式の解に時刻無限大で漸近的に近づくことを示した.
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