研究分担者 |
有澤 真理子 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 助教授 (50312632)
長澤 壮之 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70202223)
小薗 英雄 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00195728)
水町 徹 横浜市立大学, 理学部, 助教授 (60315827)
太田 雅人 静岡大学, 工学部, 助教授 (00291394)
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研究概要 |
平成13年度は場の古典論(classical field theory)に現れる,Dirac-Proca方程式とMaxwell-Higgs方程式について研究した.前者は弱い相互作用を記述する中間ベクトルボソン模型に対応した方程式系であり,後者は相対論的超伝導理論で重要な役割を果たす方程式系である.Dirac-Proca方程式に対しては,特異摂動問題を考え,Maxwell-Higgs方程式に対しては,非自明な定数真空解の安定性を解説した. Dirac-Proca方程式は,低エネルギー状態すなわちProca場の質量がDirac場やProca場が表す粒子の運動エネルギーよりずっと大きい場合では,Dirac方程式によって近似されると考えられる.(これはいわゆる,Fermiの4体相互作用模型に対応している.)Proca方程式の場合,質量項は解の時間変数に関する振動の効果を引き起こす.そこで,方程式系を積分方程式に書き直し,Proca場の質量が十分大きいときは,この振動の効果によりProca場を表す波動関数は,Dirac場の波動関数どうしの積で近似できることを証明した.これは,Fermiの4体相互作用模型の数学的正当化を与えている. Maxwell-Higgs方程式に対する定数真空解の安定性の問題は,異なる質量項を持つKlein-Gordon方程式の連立系を,ゼロ解の周りで解くことに帰着される.この方程式系の場合,空間2次元のとき,2次の非線形相互作用は短距離型相互作用と長距離型相互作用の境目のケースに相当し,数学的には,解が時刻無限大でどのように振る舞うか非常に興味深い問題である.今回研究で,質量項を持つKlein-Gordon方程式の場合,ある条件の下では,2次の非線形性はすべて零条件を満たす項と3次以上の項の和に書き直せることが証明された.さらに,この結果を用いて,定数解の漸近安定性を示すことに成功した.しかし,今回の研究で除外されたケースにおいて,どのような現象が起きているかは未解決のままであり,今後の重要な研究課題であろう.
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