研究分担者 |
有澤 真理子 東北大学, 大学院・情報科学研究科, 助教授 (50312632)
長澤 壮之 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70202223)
小薗 英雄 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00195728)
水町 徹 横浜市立大学, 理学部, 助教授 (60315827)
太田 雅人 埼玉大学, 理学部, 助教授 (00291394)
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研究概要 |
1次元トーラス上の修正KdV方程式(modified Korteweg-de Vries equation)に対し,初期値問題の適切性を研究した.修正KdV方程式は,流体力学やプラズマ物理におけるモデル方程式として重要なだけでなく,非線形シュレディンガー方程式など他の非線形分散型方程式との関連も深く,きわめて興味深い方程式の一つである.この初期値問題に対して,1993年にBourgainがフーリエ制限法とよばれる新しい解析方法を提出し,微分可能性指数1/2以上のSobolev空間においては,一意解が存在することを示した.さらに彼は1997年に,微分可能性指数1/2未満のSobolev空間では,解写像が2回Frechet微分可能とならないことも示した.微分可能性指数が1/2以上のとき,解写像は無限回Frechet微分可能となることは容易に分かるので,この事実はある意味で,微分可能性指数1/2未満のSobolev空間において,初期値問題の適切性が崩れていることを示している.今年度は,微分可能性指数1/2未満のSobolev空間において,修正KdV方程式の初期値問題にどのような現象が生じているのかを調べた. 修正KdV方程式をフーリエ空間で考察すると,3次の非線形性において,符号の異なる高周波成分どうしの相互作用により,周波数が上がりも下がりもしない項が,もっとも悪い評価しか成立しないことが分かった.この項は方程式に,フーリエ空間における振動効果を与えるため,それによってあまり広い関数空間では,解の初期値に関する一様連続依存性が壊れる.今回はこのフーリエ空間における振動効果を与える項を引き去ることにより,Sobolev空間の微分可能性指数が1/2未満でも3/8より大きければでも,初期値問題の適切性が回復することを証明した.これは関数空間の距離関数が,解自身に依存するものを考えることであり,いわば平坦な空間で非線形発展方程式を解くのではなく,曲がった空間で解くことに相当する.修正KdV方程式という特別な非線形発展方程式に対する結果ではあるが,今後他の問題への応用が期待される.
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