研究概要 |
計画調書の研究目的にかかげた目標に関する幾つかの興味ある成果が得られた.以下にその主なものを挙げる. (I)楕円型方程式 (i)(E)-Δ(|Δu|^<p-2>Δu)=λ|u|^<p-2>u+μg(x,u) x∈Ω, u(x)=Δu=0 x∈∂Ωに対して,次の定理を得た.ΩはIR^Nの有界領域,g(x,u)は高々q次(q∈(2,2^*),2^*=Np/(N-2P))の増大度をもつCaratheodory関数とする.(a)μ=0のとき,第一固有値λ1(P)>0が存在しsimple, isolatedかつP→λ_1(P)は連続また,付随する固有関数uはu(x)>0,Δu(x)<0, x∈Ω,∂u/∂n(x)<0 x∈∂Ωをみたす.(b)μ>0のとき,(E)は(λ_1,0)から分岐する非自明解(λ,u)をもち,非有界であるかまたは他の固有値λ_k>λ_1からの分岐点(λ_k,0)につながる.これは、Idogawa-Otaniによる楕円型作用素の第一固有値に関する抽象論を適用することによって得られた.(ii)劣微分作用素∂ψを含むBanach空間X上で定義された汎関数J(u)=∂ψ(u)-B(u)に対する"Principle of Symmetric Criticalilty"が示された.即ち,(a)Gの作用が等距離的である,または(b)X及びその双対空間X^*がともに回帰的かつ狭義凸である,が成り立てば,「symmetryを表現する群Gの作用に関して不変な部分空間X^*上でのJの臨界点がXでの臨界点を与える」ことが示された。これは,Palaisによる古典的な"Principle of Symmetric Criticalilty"の拡張を与えており、その応用範囲がさらに広がることが期待される. (II)放物型方程式 (i)劣微分によって支配される回帰的Banach空間における発展方程式du(t)/dt+∂ψ(u(t))∋f(t)に対する初期値問題,周期問題の可解性,正則性が示された.この枠組は,Galerkin法による弱解の従来の構成法よりも,より良い正則性を持つ解が自然に構成されるという利点を有する.またOtaniによるHilbert空間における劣微分作用素に対する非単調摂動理論をBanach空間へ拡張する際の手掛かりを与えているという意味からも意義がある. (ii)porous medium方程式を含む,より一般的なタイプの方程式に対する初期値境界値問題(Neumann, Dirichlet)がC^∞-級の時間局所解をもつことが,空間1次元の場合に示された.これにより,前にIR^1におけるporous medium方程式に対して開発された方法が,初期値境界値問題に対しても有効であることが実証された. (iii)空間1次元の一般のporous medium型退化拡散方程式の解の符号変化を伴うinterfaceの滑らかさについて,interfaceの近傍での初期値の単調性の仮定無しに,高々一時刻を除いて,interfaceが1回連続微分可能であることが示された.証明は,あるクラスの対称な定符号をもつ解のグラフと考える解のグラフとの交点の個数を調べることによって,有限時間後に解のinterface近傍での単調性が得られることによってなされる.この結果は,Bertsch-Hilhorst(1991)の拡張をあたえている.
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