研究課題
VERA計画は相対VLBI法を用いて10μas台の高精度絶対位置計測を可能にする世界初のプロジェクトであり、その精度達成のためには目標天体と同時に観測するクエーサー、系外銀河などの参照電波源の存在が不可欠である。我々は、この参照電波源探査のために、郵政省通信総合研究所鹿嶋宇宙通信センター内にある34mアンテナに冷却43GHz受信器を搭載し、NRO45m鏡等とのVLBI観測を計画している。これにより銀河面内の電波源カタログに掲載されたソースをVLBI観測し、VERAで観測可能なVLBI電波源のソース作りを行いたい。このため大学院生達と小型の冷却デュワーの設計を行い、製作し、HEMT受信機の冷却に成功し、更に、本研究費で購入した局部発信機を含む回路作りを終え、34mアンテナに搭載した。43GHz受信機の性能は大気込みで300Kとなり、初期の性能目標は達成された。しかし、天体追尾中にアンテナをEL方向に倒していくと強度が著しく減少していくことが判明した。副鏡が倒れるにつれ重力で垂れるためである。これまでの22GHz以下の周波数帯ではこの副鏡の垂れは無視できたのだが、43GHzになるとビームが細くなるため、副鏡の垂れがもろに効いてくる為である。副鏡の垂れを補正する制御が必須となる。しかしながら、4年前、34mの副鏡が落下する事件がおこり、34m鏡はアメリカ製であるが、修理を日本の会社に一任した。その際、ブラックボックスになっていた副鏡の駆動機構の一部改造も行われた。しかしその会社は結局自力では副鏡の駆動に成功せず放置されたままになっていた。この大問題が浮上し、難しさのためにあきらめかけたが、当研究室の大学院生がこの課題に果敢に取り組み、通総研のスタッフと協力して、完全ではないがアクチブな副鏡の制御に成功した。3月からポインチングの観測に取り掛かっており、器差ファイルが完成し次第SiOメーザー源のサーベイ観測にかかる予定である。その後、45m鏡、或いはVERA鹿児島局20m鏡などとのVLBI観測を進めたいと考えている。この仕事以外に、34m鏡のシングルディッシュ観測が可能になるよう AOS分光計を設置し、また、周波数トラッキングのソフトも整備した。かくのごとく34m鏡のアンテナとしての性能(トラッキング)は格段によくなり、観測環境はかなり向上し、43GHzの観測計画達成も可能となろうとしている。
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