研究課題
平成14年度は、平成13年度に開発に成功した陽極酸化を利用した新しい作製プロセスを用いた素子の作製、及び、雑音低減法を用いた評価実験を行った。素子作製においては、理化学研究所内の超伝導接合素子(STJ)作製専用プロセスラインを用いて、トンネル障壁の薄いSTJ検出器の作製を行った。実現した臨海電流密度は約1kA/cm^2と従来の10倍である。素子構造はNb/Al/AlOx/Al/Nbである。素子評価においては、まず高エネルギー加速器研究機構の放射光施設を用いて、極端紫外線〜軟X線(47-280eV)の照射実験を行い、55eVの光子に対して18eV(FWHM)というエネルギー分解能を達成した。また、平成13年度に理化学研究所の実験室において、2.1eVという低雑音を実現していたため、理化学研究所において2.6eVという可視光領域の光子検出を試み、約1.5eVというエネルギー分解能で光子の分光検出に成功した。この実験においては、1光子のイベント以外に、2〜5光子の同時検出イベントが観測されており、5-13eVという紫外線域相当のエネルギーのイベントの分光検出にも成功した。この結果により、紫外線域で分光検出が可能な検出器を開発するという本研究での最終目標が達成された。得られたエネルギー分解能はFWHMにして1.8eV@5.3eV、2.6eV@13.2eVである。電気的雑音成分が1.1eV相当であることを考慮すると、素子固有のエネルギー分解能は1.4eV@5.3eV、2.4eV@13.2eV相当である。分光性能を示すλ/Δλは5程度とまだ十分ではないが、その要因としては冷却時の素子の漏れ電流が10nA程度と大きかったことが挙げられる。しかし、本研究において同様のSTJ素子で1nA程度の漏れ電流をすでに実現しており、信号雑音比(∝λ/Δλ)をさらに向上させるための技術的基盤は本研究においてほぼ確立したと言える。以上、本研究の所期の目的はほぼ達成された。
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