研究課題
基盤研究(B)
X線検出STJ素子作製用に構築された理化学研究所のSTJ作製専用プロセスラインを利用し、紫外線検出用STJ素子を試作した。この作製プロセスにおいて、1.表面保護膜(SiO_2層)の除去プロセスの導入2.陽極酸化法の導入3.Al準粒子トラップ層の厚みの4割増加を新たに施し、1により紫外線に有感な素子の実現、2によりトンネル障壁の品質の向上(従来の10倍の臨界電流1kA/cm^2で漏れ電流1nA以下を実現)、3により信号電荷の増幅(従来の5倍以上)を果たした。この素子の紫外線応答特性評価のために、高エネルギー加速器研究機構放射光施設(KEK-PF)で紫外線〜軟X線(47-280eV)の照射実験を行い、18eV(FWHM)@55eVというエネルギー分解能を達成し、国内で初めて一光子分光検出を実現した。また、雑音成分の主要因がクライオスタット内のステンレス同軸信号配線の高い浮遊容量に起因する電気的雑音であることを突き止め、配線を低抵抗の単線に置換して浮遊容量を低減し、雑音を2.1eV相当(従来の1/4)に低減した。さらに、よりエネルギーの低い2.6eVの可視光照射実験でエネルギー分解能1.5eVで分光検出に成功した。この実験では2〜5光子の同時検出イベントも観測され、5-13eVの光子に相当するイベントの分光検出を実現した。エネルギー分解能はFWHMで1.8eV@5.3eV、2.6eV@13.2eVである。電気的雑音成分は1.1eV相当であり、素子固有のエネルギー分解能は1.4eV@5.3eV、2.4eV@13.2eVと見積もられた。この実験では、使用素子の漏れ電流が10nA程度と大きくλ/Δλは5程度に留まったが、同様の素子で1nA程度の漏れ電流を実現しており、信号雑音比(∝λ/Δλ)の向上のための技術基盤も確立したと言える。以上、本研究の目的は達成された。
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