研究概要 |
1 PP-wave極限におけるholographic principle(米谷):前年度の研究において提唱したAdS/CFT対応の特別な極限としてのPP-wave limitでのholographic principleの解釈を共形不変性が存在しない一般のDpブレーンの場合まで拡張した.これにより,P=1-4までの場合,すなわち超対称Yang-Mills理論で言えば0+1次元から0+4次元の場合において強結合の領域における2点相関関数を初めて与えることに成功した.この結果は,低次元(p=0〜2)および繰り込み不可能(p=4)の双方の場合においてYang-Mills理論の大N極限を記述する非自明な繰り込み群固定点の存在を強く示唆している.この研究は,平成16年夏に京都で開催された国際会議Strings 2003の招待講演としても発表された. 2 超弦の共変的定式化(風間):露わに超共形性を実現する超弦理論の新しい世界面形式として注目されている「pure spinor (PS)形式」において、pure spinorを定義する非線形な拘束条件が幾つかの重要な困難を引き起こすことを指摘し、この非線形条件を伴わない拡張された場の空間を用いる「拡張された(Ex-tended) Ps形式」(EPs形式)を提唱した。そして、この新形式がPS形式と等価な物理的内容を持つこと、さらにはよく知られたRNS形式とEPS形式を結ぶ厳密な量子論的写像が構成できることを具体的に示した. 3 格子上の超対称ゲージ理論(加藤):超対称格子ゲージ理論の構成についての研究を引き続きおこなった。特に市松格子上のゲージ理論の相構造を解析的および数値的に調べ、通常格子との関係やユニバーサリティクラスについて明らかにした。また、格子上のフェルミ的対称性と連続の超対称性の関係について考察し、2次元の場合にはN=2超対称性との関係を、その他の場合にもある程度一般的構造についての理解を深めた。 4 超弦理論におけるタキオン凝縮(橋本):超弦理論における交差するブレーンがどのように組み替わるかを、低エネルギー有効理論の立場から明らかにした。これは、ブレーンが局所的に消滅したことに相当しており、ブレーンの消滅に関するSenの予想を特定の場合に証明したことになる。この研究結果について、弦理論の唯一の大規模国際会議であるStrings2003,そして米国アルゴンヌ国立研究所における、ブレーンの力学に関する国際研究会で、招待講演を行なった。
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