研究概要 |
電子・陽電子衝突によるτ対生成・崩壊及びb稀崩壊事象のシミュレーションを高統計で行い、サンプル濃縮データを蓄積する体制を、名古屋大学高エネルギー研究室に構築した。特にτ事象を濃縮したスキムデータの管理は、Belle共同実験の中で名古屋大学が分担し、hepnetによってそれらを共同実験グループメンバーの利用に供した。 τ対生成に於けるCP/Tの破れとτの電気2重極モーメント(EDM)、τ崩壊に於けるCP対称性の破れ、τのレプトン数保存を破る崩壊の上限の更新、など、比較的少ないデータサンプル(10^6個程度)で有意の効果が期待できる過程、ある程度データの蓄積を必要とする、レプトンが絡んだbのFCNC稀崩壊、τ崩壊の終状態のハドロン質量分布の高精度測定、を平行して解析を進めた。 τ対生成におけるCP/T非保存パラメーターは、τのEDMと関連付けられる。τの崩壊モードとしてeμ,eπ,μπ,eρ,μρ,πρ,ππ、ρρを用い、これまでの上限値を一桁更新する値を得た。τ→ππ^0υ崩壊の角度分布測定は、測定限界内でのCP成立を示した。τ→μγ崩壊の探索により、レプトンフレイバー非保存崩壊の上限値を追求した。これまで最も感度の良い探索はCLEOによるものであるが、それを上回る感度を得た。さらに精度を上げるべく解析が続行している。 bクオークのFCNCによる稀崩壊b→sll過程に関しては、まずexclusive崩壊過程であるB→K(^*)e^+e^-及びB→K(^*)μ^+μ^-過程の探索を行い、これまで上限値しか得られていなかったB→Kl^+l^-の崩壊分岐比に初めて有意の値を得た。さらに、ストレンジネスを持ったハドロン系終状態を加算することによって、b→sll包括過程においても有意の分岐比値を得た。 これらの結果は、雑誌、各種国際会議で発表された。
|