研究概要 |
過去の太陽活動を調べるために,樹木年輪中の放射性炭素濃度を調べている。特に過去1000年間に数回あったとされる太陽活動の極小期の中で,まだ精度のよい測定がなされていないシュペーラー極小期(西暦1416-1534年)について測定を行ってきた。シュペーラー極小期を含む140年分の屋久杉年輪試料からベンゼンを合成し,液体シンチレータのベースとした。これらの試料に含まれる放射性炭素^<14>Cの濃度を順次測定中である。これまでに約80試料について1回目の測定が終了した。 全試料について,同位体効果の補正を行うために必要な^<13>C濃度の測定を完了した。すべての試料がδ^<13>C値で-22〜-25‰の間にあることがわかった。また,各年輪の正確な年代を確定するために,加速器質量分析計(名古屋大学年代測定総合研究センター)を用いて,年輪の外側近くの20年分について,1960年代に行われた大気圏原水爆実験の影響によるC-14濃度の変化を測定した。その結果,C-14濃度増加のピーク年代が1964年であることから,使用した年輪の最外層が1991年であることを決定し,そこから年輪を内側へ向かって計数することにより,シュペーラー極小期に相当する年輪を確定した。年輪計数の精度は偽年輪などの影響を考慮して2〜3年と見積もられる。 現在までに得られたΔ^<14>C値は,西暦1410年から1470年までは比較的緩やかな変化を示しているが,1470年から1510年にかけて大きく減少し,それ以後また回復するという変化を示している。これは西暦1500年頃に^<14>Cを生成する宇宙線の地球への入射量が増加したことを示唆している。さらに測定点数を増やし,データを確定するとともに,地域的な気候の影響などについて検討していく予定である。
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