研究概要 |
過去1000年の太陽活動の変動を調べるために, 年代が既知の屋久杉年輪中の放射性炭素(14C)濃度を測定した。これまでに, 太陽活動が低下していたといわれるシュペーラー極小期(西暦1416-1534年)について測定試料の合成と14C濃度の測定を行ってきた。西暦1410年から1480年までの試料はベンゼンに変換し, 液体シンチレータ法(LSC法)で測定した。西暦1480年から1530年までの試料については, 純度のよい, 十分な量のベンゼンが得られなかったので, 加速器質量分析法(AMS法)で測定した。LSC法では統計のよい測定を行うために100gの木の試料が必要であるのに対して, AMS法では10mgでよい。現在達成できる測定精度は, LSC法で0.3-0.4%, AMS法で0.4-0.5%である。最終目標は0.2-0.3%であるが, 第一段階としてやや低い精度で測定した。 現在までに, 1410年から1480年までの試料については一部を除きほぼ1年ごとに14C濃度のデータが得られた。1480年から1530年までの試料については1年おきのデータが得られた。一部の試料についてはLSC法とAMS法の両方で測定し, 誤差の範囲で14C濃度が一致することを確認した。我々の得た14C濃度の値を, Stuiverらが北米地方の樹木で10年ごとに測定した値と比較したところ, 誤差の範囲内で一致した。 我々の測定した14C濃度の変動は, 長期の変動成分を取り除くと±0.5%の中にほぼおさまっており, Kocharovがマウンダー極小期で得たような大きな変動は見られなかった。未測定点を線形補間した後, 最大エントロピー法で周期解析を行ったところ, 21年周期に有意に大きいスペクトル密度を得た。これはマウンダー極小期で見られたのと同じ傾向で, 太陽活動の極小期において通常期とは違うメカニズムがあることを示唆している。
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