研究概要 |
超高エネルギー宇宙線を観測するために、地球周回望遠鏡を打ち上げ、大気中で超高エネルギー宇宙線が作る空気シャワー中の電子が発する蛍光を観測する計画が立案されている。この観測により宇宙線のエネルギーを決定するには、大気中での電子の発光効率を知る必要がある。大気を模した容器内で、電子の発光効率を測定するため、一辺25cmの立方体のアルミ製の測定容器を製作した。中心部に^<90>Sr線源を取付け、コリメータを通じて電子を10cm走らせ、ガス中で発光した光子を側面3ヶ所に取り付けた光電子増倍管で計測する。3本の光電子増倍管にはそれぞれに中心波長337nm,356nm,391nm(半値幅各10nm)の干渉フィルターを取り付け、窒素、空気(湿度55%)につき、それぞれ圧力を75hPa〜1010hPaまで変化させ、発光効率の変化を測定した。結果は以下のとおり。(1)窒素ガスの場合、波長バンド337nm,356nmの時気圧が低くなる程発光効率は小くなり、発光寿命が長くなる。391nmでは、気圧依存性が小さく、発光寿命が変化しない。(2)空気の場合、傾向は窒素の場合と同じであるが、発光寿命は窒素に比較して短い。(3)窒素と空気の発光効率の比は、337nm,356nmの場合、1気圧で約6〜7、0.1気圧では4である。一方391nmの場合、圧力に関係なく約2である。(4)これらの違いは337nm,356nmの発光は窒素分子の2Pバンドであるのに対し、391nmの発光は窒素分子イオンの1Nバンドであり、それぞれの励起状態の寿命の差に基くことで説明できる。 今後空気について、乾燥空気の場合を含め、発光効率の湿度依存性を測定する。標準空気の場合のみならず、窒素、酸素の割合を変えて、発光効率、励起状態の寿命のの変化を測定し、理論的予測との比較をおこなう。
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