大強度ビーム対応型K^+稀崩壊実験装置の開発

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12440070
• 研究機関: 高エネルギー加速器研究機構
• 研究代表者: 杉本 章二郎 高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (20044753)
• 研究分担者: 小松原 健 高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助手 (30242168) ; 佐藤 任弘 高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教授 (10013418) ; 小林 正明 高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (40013388) ; 新川 孝男 防衛大学校, 応用科学群, 助教授 (70171064) ; 玉川 洋一 福井大学, 工学部, 助手 (40236732)
• キーワード: K中間子 / 稀崩壊 / 大強度ビーム / チェレンコフ検出器 / シリコンストリップ検出器 / トリガーボード / 次世代実験装置

研究概要

大強度ビームで稼動する次世代K^+稀崩壊実験装置を開発するため下記の研究を行った。
1.大強度2次ビームライン中のK^+とバックグラウンドのπ^+,μ^+,γとの高精度分離。
(1)K^+ビームには感応せず,ビームに含まれるバックグラウンド粒子(π^+,μ^+)や崩壊反応で発生するγ線に対しては高性能で感応する「バックグラウンド除去用検出器」を開発するために,PWO結晶シンチレーターをチェレンコフ化する試みを進めた(発表論文)。この新しい結晶をKEK-PSでビームテストして,その優れた性能を確認した(論文作成中)。
(2)入射ビームK^+と,ビームに含まれるπ^+やμ^+を分離し,かつ各粒子の軌跡を正確に知るために,1mmピッチのシリコンストリップを用いた高速・高性能DE/DX測定システムの開発研究を開始した。
2.稀崩壊事象を高速・高効率で選別し、高純度データ収集を可能とする高速判定トリガーボードの開発。
(1)ALTERA社製のMAXとFLEX(プログラマブルアレイを内蔵するICチップ)を用いて高速トリガーボードの製作・試験を行い所期の目標を達成した。現在,このボードをBNL/AGSでのE949実験装置に組み込んで,実際のK^+稀崩壊実験での性能評価を行っている。
(2)上記のアレイチップの中にミーンタイマーの機能を組み込み,多入力に対し高速で論理判定可能なボードを開発した。これをE949実験装置に組み込んで性能評価を行っている。
3.次世代実験と装置の検討。
BNL/日米共同実験E787の物理解析の成果(発表論文)を基に,次期実験の方向を検討した。また,日米欧で実施中または計画中の実験を検討して将来の実験装置の計画を作成するために、平成13年2月14-16日にKEKにおいてワークショップを開催し,国内外から多数の参加者を得て活発な議論検討を行った(会議録出版予定)。

研究成果

• [文献書誌] S.Adler et al.: "Further Search for the Decay K^+→π^+νν"Phys. Rev. Letters. 84・17. 3768-3770 (2000)
• [文献書誌] S.Adler et al.: "Measurement of Structure-Dependent K^+→μ^+νγ Decay"Phys. Rev. Letters. 85・11. 2256-2259 (2000)
• [文献書誌] S.Adler et al.: "Measurement of Direct Photon Emission in K^+→π^+π^0γ Decay"Phys.Rev.Letters. 85・23. 4856-4859 (2000)
• [文献書誌] S.Adler et al.: "Search for the decay K^+→π^+π^0νν"Phys. Rev.. D63・3. 032004-5 (2001)
• [文献書誌] M.Kobayashi et al.: "A new heavy and radiation-hard Cherenkov radiator based on PbWO4"Nuclear Instruments and Methods in Physics Research. A459・3. 482-493 (2001)