研究課題
今年度は、1)レーザーアブレーション機構の解明、2)チャージブリーダーイオン源の製作を行った。1)の成果により、今研究のテーマの一つとしてきたアブレーションによる高効率な選択的レーザーイオン化への可能性を示すことができた。また、重い元素に対する多価イオンへのオンライン変換を行う装置としてチャージブリーダーイオン源のテストを続けてきたが、その研究をもとに実機の製作にこぎ着けることができた。今研究の成果をまとめて、雑誌および学会に発表した。1)アブレーションプルーム中のネオジムの速度分布を、レーザー誘起蛍光法で測定した。実験には昨年度搬入されたYAGレーザーを用いた。測定の結果、アルゴン0.7torr雰囲気でアブレーションした場合、真空の場合に較べて中性原子で約二桁、イオンで約一桁平均速度が遅くなることがわかった。この差を利用して両者を分離できる可能性がある。また、アブレーションで放出された粒子のターゲットからの距離による速度分布を調べ、近距離(<20mm)ではターゲットから離れるとともに速度が速くなることがわかった。さらに、放出される粒子密度のYAGレーザー強度に対する依存性などを明らかにした。2)チャージブリーダーイオン源テストベンチでの試験およびECRプラズマ中でのイオンの運動のシミュレーションの結果をもとに、1価イオンのECRプラズマゾーンへの減速入射系を新たに設計し、実機の製作を行った。この装置は、現在移設作業が進行中の原研東海研タンデム施設の短寿命核装置に組み込まれ、今後重い短寿命核ビームの実験に利用されることになるであろう。実機の主要諸元は、印可高周波:18GHz,1.3kW、常伝導ソレノイド磁石:最大1.5T、ソレノイド型補正磁石:0.4T6極永久磁石:最大1.3T、最大プラズマ領域:〜300mmx75mmΦである。
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