研究課題/領域番号 |
12440074
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研究機関 | 高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
古屋 貴章 高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教授 (70156975)
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研究分担者 |
光延 信二 高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教授 (50100821)
絵面 栄二 高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授 (60044749)
黒川 眞一 高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授 (90044776)
赤井 和憲 高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教授 (10184061)
福間 均 高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教授 (40150007)
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キーワード | KEKB加速器 / 超伝導空洞 / 蓄積電流 / 電流値 / 高調波減衰器 / 入力結合器 / 高周波高電力試験装置 / 低温計測装置 |
研究概要 |
KEKB加速器の性能をさらに向上させるためには、加速ビームの制御系の改善や電流値の増強が必要である。本研究課題が昨年度から続けている超伝導空洞の信号解析結果をデータベース化し、加速器オペレーターが直接解析できる環境を築くことよって、運転条件やビーム不安定性と空洞性能との相関がより詳細に把握できるようになった。これにより空洞トリップの原因が空洞側だけでなくビーム側にもあることが判明、そのメカニズムが明らかになるとともに、空洞や加速器を大電流ビームから守るために必要な保護回路を完成させた。 空洞構成要素の研究では、入力結合器や高調波減衰器の電力試験を継続するとともに、SuperFish、SeaFish、CLANSなどの計算機コードを用いての空洞本体形状の計算と計測も行い、放射光加速器として一般的な500MHz空洞についてインピーダンスの実測と計算値の比較をするなどの形状最適化のための基礎研究を行った。 この研究の成果として、本年度KEKB加速器は大きく進展し、加速器性能の指標であるルミノシィティーは8.2x10^<33>cm^<-2>s^<-1>を超え、世界最高のルミノシティを持つ電子陽電子衝突型加速器となった。本研究課題である大電流型超伝導空洞が設置されている電子リングの蓄積電流はついに1アンペアを超え、これまでに超伝導空洞が達成した電流値の世界記録を達成した。これまでに得られた数々の数値データからは、1アンペアに至る電流下でも超伝導空洞は1.8MVの加速電圧を安定に供給することが証明されたが、これは従来型常伝導型空洞の3台分以上に相当する電圧である。また、ビームが誘起する高調波は計算による予想と一致することが示され、それによれば次世代加速器に要求される高いバンチ電流、短いバンチ長では吸収電力は現在よりも1桁大きい数十kWに達することが予想され、これを吸収できる高調波減衰器の実現が必要である。これらを解決することにより、大電流用超伝導空洞は加速器性能を飛躍的に改善する現実的な手段となることが判った。
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