本年度は、CCDからのX線データを効率良く処理するデータ処理系の開発を主に行い、あわせて軟X線発生装置をはじめとする実験系の整備も行った。 サブミクロンの位置分解能をもつX線スペクトロメータは、X線CCDを用いることで原理的には開発可能と考えられる。ただし、CCDとしては、ピクセルサイズが10ミクロンかそれ以下しかないCCDを用いる必要がある。しかしながら、このような小ピクセルのCCDは、必然的にピクセルの総数が多くなってしまう。典型的には、百万から一千万ピクセルになると考えられる。このような多量のピクセルデータから、X線によって作られた信号のみを取り出すには、高速のデータ処理が必須である。このため、従来は高速処理に適したDSPを利用するなどの方法がとられていた。しかしながら、サブミクロンの位置分解能を持つX線CCDのデータを処理するには、それでも2桁ほど処理速度が不足している。そこで我々は、FPGAを用いたハードウエアにデータ処理のアルゴリズムを実装することで、CCDデータの高速処理装置の開発を行った。 このデータ処理装置は、CCDの駆動クロックに同期して動作し、X線によって作られた電子雲の抽出、電子雲の形状の分類、全電荷量の計算を行う。擬似CCDデータで動作試験を行い、毎秒一千万ピクセルを超えるデータが処理可能であることが実証できた。このデータ処理装置は、CCDデータに対してある種の画像処理を行うことに対応しており、X線データ処理のみならず、高速動作が要求される画像処理装置として幅広い応用が考えられる。
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