研究概要 |
われわれは、透過型電子顕微鏡で特定した微小領域から価電子帯状態密度分布測定を可能とするため、透過型電子顕微鏡用の小型高分解能X線発光分光装置の開発を行い、BNやその関連物質の価電子帯状態密度分布測定や励起状態研究に適応してきた。 開発した小型高分解能軟X線発光分光装置は、不等間隔回折格子とCCD検出器から構成されている。刻線密度1200l/mmと2400l/mmの二つの不等間隔回折格子を用いることで、60eVから1200eVのエネルギー範囲を測定できるようになっている。CCD検出器のサイズは27.6x27.6mm^2で、検出立体角は6.5x10^<-4>sr.となる。X線全反射ミラーを設計・製作して用いた結果、検出効率を2.2倍向上させることに成功した。したがって、ミラーを使用した場合の実行検出立体角は14x10^<-3>sr.となる。エネルギー分解能は、SiのL発光(約100eV)で0.1eV1、BのK発光(約180eV)で0.4eV、CuのL発光(約930eV)で1.4eVとなった。 この分光器を用い、h, c, w-BN、α,β-Boron、Si、炭素同素体、準結晶などに応用した。とりわけ、h-BNへ応用し、EELS測定の結果と統合した総合的な電子状態解析に成功した。そこでは、励起状態の内殻ホール効果による吸収エネルギーの変化が明瞭となり、その実験的値が理論的予測とよく一致することを見出した。
|