今年度は、高エネルギー分解能逆光電子分光装置の設計・製作を行った。off-plane eagle型配置での真空紫外線のレイトレースを行うプログラムを作成し、期待されるエネルギー分解能、強度の見積もりを行った。当初の計画では曲率半径1.5mの凹面回折格子を用いる予定であったが、真空紫外線の強度を十分に確保するために曲率半径0.5mの凹面回折格子(刻線密度1200本/mm)を用いるべきであることが判明した。その結果、真空紫外線と電子線のエネルギー分散をマッチングさせるためには、10eV程度のエネルギーで15meV/mmの分散をもつ電子線1μA程度を供給する電子源が必要となった。この条件を満たす電子源として平行平板型電子源が適しているとの結論に至り、設計・製作を行った。さらに、高エネルギー分解能を実現するためには凹面回折格子と平行平板型電子源の相対的な位置を最適化する必要があるが、両者の位置を高精度で調節・最適化できる機構を設計・製作した。平成13年度は、この凹面回折格子と平行平板型電子源の位置を最適化してエネルギー分解能の改善を行う。さらに、非占有状態を調べることが懸案となっている物質の測定を行う。特に、光電子分光による1次元・2次元構造を持つ銅酸化物の占有状態研究の進展に伴い、その非占有状態の研究が待望されているので、逆光電子分光装置を用いて1次元・2次元構造を持つ銅酸化物の非占有状態の研究を行う予定である。
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