高エネルギー分解能逆光電子分光装置の開発

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12440080
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 溝川 貴司 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (90251397)
• キーワード: 逆光電子分光 / off-plane eagle型配置 / 真空紫外線分光 / 非占有状態 / 電子線エネルギー分析器

研究概要

真空紫外線と電子線のエネルギー分散をマッチングさせるためには、10eV程度のエネルギーで15meV/mmの分散をもつ電子線1μA程度を供給する電子源が必要であるとの結論に至り、この条件を満たす電子源として平行平板型電子源の設計・製作を行った。今年度は、この平行平板型電子源の評価、改良を行った。この平行平板型電子源は最も技術的に困難な部分であり、電子源の完成が高エネルギー分解能逆光電子分光装置開発の成否を分ける。高いエミッション電流が得られる含浸型BaOカソードを用い、新しいタイプの平行平板型電子源の製作を行った。この成果は、平成14年9月の日本物理学会、平成15年1月の日本放射光学会にて発表した。電子線のカレントは0.2μA程度であり、未だに目標に達していない。結果として、研究計画の3年間で逆光電子分光装置を稼動させることができなかったが、あと一歩でこの新しいアイディアによる逆光電子分光装置が完成するところまで到達した。また、研究の副産物としていくつかの研究成果がある。まず、研究対象としている次元銅酸状態を角度分解光電子分光で調べ、1次元特有のTomonaga-Luttinger流体的な振る舞いを観測した。さらに、1次元および2次元銅酸化物の非占有状態を非制限Hartree-Fock計算によって調べ、ホールドーピングによるバンド構造の変化を予測した。今年度でこの研究プロジェクトは終了するが、継続して逆光電子分光装置の開発を行う。

研究成果

• [文献書誌] T.Mizokawa, K.Nakada, C.Kim, Z.-X.Shen, T.Yoshida, A.Fujimori, S.Horii, Yuh Yamada, H.Ikuta, U.Mizutani: "Angle-resolved photoemission study of Zn-doped PrBa_2Cu_4O_8 : Possible observation of single-particle spectral function for a Tomonaga-Luttinger liquid"Physical Review B. 65巻. 19310 1-1-19310 1-4 (2002)