研究概要 |
金属表面では、表面の電子密度が平坦化されるため吸着水素の隣のサイトへのポテンシャル障壁が著しく低下し、その結果水素原子核の波動関数が表面全体に非局在化する可能性が理論的に示唆されている.本研究ではこれまでに我々の開発してきた共鳴核反応法を用いて、表面秩序合金系に吸着した水素のゼロ点振動に起因する運動量分布の直接測定を行い,水素の非局在系の探索とその検証を行うことを目的として研究を進めている. 今年度は,次の項目について研究を行った: 1.試料ホルダーの改良:精密な温度依存性の測定するために,試料と冷媒との熱接触を向上させ冷却効率を向上をはかった.2.ビームラインの改良:イオンビーム光学系における収束系を変更してビームサイズの整形を行った.またビームパルス化のための偏向器の設計を行った.3.斜入射条件での実験:偏角振動モードの測定感度向上を狙って,入射角80°でSiについて実験を行い,この条件ではステップによるシャドーイングの影響が無視できないことを明らかにした.4.Pt表面での実験:純粋なPt表面で吸着水素のゼロ点振動測定を行い,偏角振動の振動数を求めた.電子エネルギー損失分光による結果を考慮し,この表面では水素は局在傾向にあることを示した.5.表面合金試料の準備:測定用の表面合金としてPt上のPtCu合金の準備を行った.6.Ti表面での実験:Ti表面で実験を行い,この表面では表面垂直方向の運動が促進され表面から5nmの領域に表面水素化物相を形成することを見出した.
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