研究概要 |
本研究では,共鳴核反応零点振動分光法を用いて、表面秩序合金系に吸着した水素のゼロ点振動に起因する運動量分布の直接測定を行い,表面水素非局在化の検証を目的としている.遷移金属に比べると貴金属や単純金属は水素との相互作用が小さい.このため遷移金属と非遷移金属の表面合金上では,非遷移金属原子をはさむ遷移金属サイト間にポテンシャルの平坦な部分が出現し,吸着水素がこれらのサイトに非局在化して存在することが期待できる.昨年度に構築した試料ホルダー・イオンビーム光学系を利用して,本年度は,Pt(111)-SnとPt(111)-Ag表面合金上に吸着した水素の零点振動測定を行った.1. Pt(111)-Sn表面合金相には,Sn濃度1/4原子層の2 x 2構造と,Sn濃度1/3原子層の【square root】3 x 【square root】3構造の2種類の相が存在する.水素の熱脱離測定を行ったところ,清浄なPt(111)表面に比べて脱離温度が高温側にシフトし,吸着エネルギーが増大していることがわかった.零点振動エネルギーを測定したところ,表面垂直および水平方向の振動エネルギーは,2 x 2表面では76.4meVと55.0meV,【square root】3 x 【square root】3表面では74.3meVと57.0meVであり,清浄なPt(111)表面とほとんど同じであることがわかった.この表面ではサイト間の非局在化は起こっていないと思われる.2. Pt(111)-Ag表面合金相は,Snの場合と異なり,表面第1層に無秩序合金相となる.この表面での水素の熱脱離スペクトルを測定したところ,脱離ピークは低温側にシフトすることがわかり,吸着エネルギーが小さくなることがわかった.また零点振動エネルギーを測定したところ,Pt(111)に比べてわずかに小さくなることがわかった.
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