研究課題/領域番号 |
12440087
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
谷村 克己 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (00135328)
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研究分担者 |
石川 憲一 大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (90288556)
宗像 利明 理化学研究所, 表面ダイナミックスユニット, 専任研究員 (20150873)
田中 慎一郎 名古屋大学, 大学院・理学研究所, 助教授 (00227141)
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キーワード | フェムト秒2光子光電子分光 / 半導体表面 / 光誘起構造変化 / 原子放出 |
研究概要 |
本研究は、共有性半導体表面に固有な擬2次元表面電子励起状態の緩和過程を、フェムト秒光電子分光法を用いて動力学的に明らかにし、表面構造の特徴との相関を明確にして、表面擬2次元励起電子系の緩和機構を解明する事にある。この動力学的知見を、励起強度の関数として系統的に研究し、表面で発生する光誘起原子構造変化に関する今までの知見との比較を通じて、表面構成原子の脱離・構造変化機構を微視的観点から解明する事を最終的目的とするものである。本年度においては、昨年に引き続き、Si再構成表面、Si(111)-(7x7)、Si(001)-(2x1)に対するフェムト秒2光子光電子分光の研究を行うと同時に、光電子分光結果との直接的対応を可能とすべく、フェムト秒光パルス励起による原子放出過程に関する研究も同時的に展開した。以下、本年度に得た結果の概要を示す。 1)Si(111)-(7x7)における2光子光電子分光の結果 3.6eVから4.5eVの光子エネルギー領域の詳細な測定から、表面準位間の遷移で共鳴的に増強される2つの光電子ピークを発見した。この表面の特徴は、表面準位間、結晶内準位間の光学遷移は観測されるが、表面と内部との電子状態間の遷移は基本的に発生しないことが特徴である。従って、表面構造とその電子状態の特徴に依存して、表面での光学遷移過程は大きく変化することが結論できる。 2)Si(001)-(2x1)における表面励起状態の動力学特性を、フェムト秒時間差光電子分光によって研究した。ダングリングボンドの占有、非占有状態間に共鳴する励起パルスで励起状態を発生させ、その3倍波で光電子を検出した。その結果、励起状態の発生には数psの遅れが存在し、またその寿命は200ps程度と極めて長い事が判明した。これらの値は、表面の構造に依存して変化する。現在、表面構造をSTMで明確にした上での測定を進めている。 3)光電子測定と原子放出測定の比較を直接的に可能とする為に、レーザー励起によるSi、InPの表面からの原子放出を研究した。ナノ秒レーザー励起による原子放出の結果、放出原子種、放出の励起スペクトルなどの諸特性の明確化を終了し、現在、フェムト秒レーザー励起による研究を展開している。
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