本研究で対象とするウラン3元化合物UPd_2Al_3、UNi_2Al_3及びURu_2Si_2は、局在的反強磁性を示すのみならず、遍歴性の顕著な現れである超伝導をも示す。これら2つの長距離秩序状態の共存こそが、この系を際だたせる特徴となっている。この系の最大の興味・問題は、「反強磁性は超伝導発現をアシストしているのか、あるいは逆にクーパー対を破壊しているのか」であり、これに解を与えようとするのが本研究の目的である。 トリアーク炉によってUPd_2Al_3の良質の単結晶を育成し中性子散乱実験を行ったところ、超伝導と磁性が強く相関していることが見いだされた。この結果を現象論的なモデルで解析した結果、局在磁気モーメントが超伝導を媒介するとして良く説明されることが明らかとなった。この成果はNature誌に掲載予定である。 一方、上記のモデルは5f電子がシングレット基底状態の仮定の上に成立している。5f電子系を直接研究する前段階として、対応する4f電子系の研究を行うため、同様にトリアーク炉によってPrPd_2Al_3の単結晶を育成した。大型の結晶は未だ育成されていないが、熱力学的物理量の測定には充分なものが育成された。これを本年度購入した加熱装置を用いて熱処理を行った結果、残留抵抗比に改善が見られた。この試料を用いて、磁化および比熱測定を行い結晶場解析を行ったところ、シングレット基底状態が実現していることが判明した。 また、URu_2Si_2の良質の単結晶を育成し高圧下での磁化の測定を行い、UPd_2Al_3と同様の負のモード結合を示すことも見いだした。このことから、URu_2Si_2の磁性及び超伝導もUPd_2Al_3と同様に理解することが可能かも知れない。 次年度は、PrPd_2Al_3の中性子散乱実験を行い、磁気励起子の直接的観測を試みる予定である。
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