研究概要 |
1.UPd_2Al_3における磁気励起子媒介超伝導 これは研究課題名にもあるように、本研究の中心的課題である。我々は良質な単結晶を育成し、種々の物性測定を行うことにより、磁性と超伝導に関する基礎的情報を得た。次にこれら二つの長距離秩序間の相互作用を明らかにすべく、中性子非弾性散乱実験を行い、高エネルギー位置に現れるピークのほかに、低エネルギー領域にも励起が存在することを発見した。後者は超伝導転移温度の上下で大きく温度変化することから、重い準粒子励起に対応するものと同定された。これらの実験結果をもとに、「5f電子の遍歴・局在2重性」モデルを用いて解析を行い、(1)上記の高エネルギー成分が磁気励起子(局在成分)に対応すること、および(2)それが重い準粒子(遍歴的成分)間に引力をもたらすこと、を示した。これにより、反強磁性。秩序状態における磁気的作用によって超伝導が誘起される初めての例を示した。この成果は、Nature,410(2001)340-343.に掲載された。 2.UNi_2Al_3における磁性と超伝導 UNi_2Al_3はUPd_2Al_3と同型の結晶構造をもち、反強磁性と超伝導が共存するなどの共通する側面をもつ一方、一様磁化率における異方性には大きな違いが見られていた。我々は、磁気秩序構造を詳細に決定し、さらにトリプレット・クーパー対が形成されていることを示した。UPd_2Al_3と比較した場合、磁気秩序状態の相違が超伝導クーパー対の対称性の相違につながっているものとの推測を行ったが、それを実験的に明らかにするまでには至らなかった。 3.UGe_2およびURu_2Si_2における磁性と超伝導の相関 ごく最近、UGe_2において強磁性と超伝導との共存が発見され、大きな話題となっている。我々は単結晶育成と高圧下における磁化測定とを行い、強磁性と超伝導が競合的に共存している可能性を指摘した。これは欧米等の他の研究グループの見解とは異なるものであり、今後詳細な研究をすすめていく必要がある。 後者に関して、高圧下熱膨張測定により新しい相転移に伴う異常を発見し、圧力対温度空間における磁気相図をはじめて完成した。低圧相の秩序パラメータの正体を明らかにするためには理論研究が必要であるが、それらの理論モデルは、上記相図を再現できるかどうかで、その成否が決定されよう。
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