研究課題
基盤研究(B)
本研究課題は高温超伝導を示す銅酸化物の超伝導発現機構解明を目指す。これまでの我々が行って来た中性子散乱実験研究では、格子構造がより簡単なLa_<2-x>Sr_xCuO_4(LSCO)結晶では置換されたSrがLa_2CuO_4のCuO_2面に電荷(ホール)を注入し、注入されたホールが運ぶスピンと電荷の協調が典型的な金属には見られない1次元的な電子やスビンの複雑な動的構造(ストライプ)を導くことが明らかになった。本研究では超伝導転移温度が高く、より格子構造の複雑なYBa_2Cu_3O_<7-x>(YBCO)の実験から、LSCOの動的構造との直接比較を基にして高温超伝導の発現に共通法則を導くことを主眼にした。結晶中のCuO鎖の酸素の科学的当量がCuO_2面のホール量を決めるが、酸素の一様性がYBCOの正確な実験を難しくしているのでこの問題解決を目指す一つの方法としてCa置換を行って、酸素の局所的秩序状態が隣接するCuO_2面の電子構造に影響を与えない実験を企画した。結果的にCa置換法は中性子散乱を行うに必要な大型単結晶育成が不可能であった為に進まなかったが、その代わり、世界最高純度のYBa_2Cu_3O_<6。92>の大きな単結晶を得ることに成功し、詳細な中性子散乱実験を行うことが出来た。他方、放射光X線非弾性散乱の超高分解能分光法の開発が本研究に不可欠な高エネルギー格子振動(フォノン)測定を可能にした。La_<2-x>Sr_xCuO_4(LSCO)の単結晶を用いた測定からフォノン異常を発見し、この方法をYba_2Cu_3O_7(YBCO)に拡張する実験に着手している。この方法により、小さなCa置換のYBCO単結晶を用いた実験のフォノン測定が可能となり電子の動的構造の実験が始めて可能となる。
すべて その他
すべて 文献書誌 (50件)