レーザーを光源として用いた場合のスポットサイズ、光量、エネルギー分解能についてのシミュレーションを行った。この結果を基に、必要とされるレーザーの仕様を検討した。それとともに、光電子分光装置とレーザーの連結部分について検討した。一方、光電子分光装置に関連して、その分解能の向上のため装置の改良等を行った。現時点で、光源のエネルギー幅をのぞいた装置の分解能は0.8meVを達成している。また、測定最低温度も、瞬間的ではあるが2.3Kを達成している。 光電子分光装置の調整と性能評価をかねて、これまでの光電子分光装置の分解能と試料温度では測定の難しかった低温超伝導体について、その超伝導及び常伝導状態の電子状態を調べた。単体金属については、世界に先駆けて超伝導ギャップの観測に成功するとともに、電子-フォノン結合に起因する微細電子構造を見いだした。Ni炭化ホウ化物の超伝導ギャップの観測を行い、その超伝導ギャップが異方的s-波であることを見いだした。Ba_<1-x>K_xBiO_3についても、超伝導ギャップを光電子分光で初めて観測することに成功するとともに、超伝導転移温度より上の温度で擬ギャップが存在することを見いだした。最近超伝導転移が発見された、シリコンクラスレートについても超伝導ギャップを測定し、弱結合超伝導体であることを見いだした。一方角度分解光電子分光実験からは、遷移金属ダイカルコゲナイド2H-NbSe_2について、これまで分離できなかったバンド全てを観測した。また、超伝導ギャップの観測にも成功し、その運動量依存性を調べた。
|