レーザーを励起光とした光電子分光装置の開発を行った。光源のエネルギー幅をのぞいた装置の分解能0.8meV、角度分解能+/-0.1度、測定最低温度4K(瞬間的には2.3K)を達成している。これらの装置緒性能は世界最高である。 本光電子分光装置装置を用い、これまでの光電子分光装置の分解能と試料温度では測定の難しかった低温超伝導体について、その超伝導及び常伝導状態の電子状態を調べた。単体金属超伝導体においては、超伝導ギャップの観測と強結合超伝導体のスペクトル形状(peak-dip-hump構造)を光電子分光で初めて見いだした。Niホウ化炭化物に関しては、不純物によるギャップ異方性の研究から異方的s-波を確認した。新規超伝導体MgB2については、その超伝導ギャップを直接観測するとともに、ギャップが多重ギャップである可能性を直接的に示した。Ba_<1-x>K_xBiO_3の研究からは等方的s-波超伝導ギャップと常伝導擬ギャップを見いだした。新規超伝導体Ba_8Si_<46>の超伝導ギャップを観測した。角度分解光電子分光実験からは、遷移金属ダイカルコゲナイド2H-NbSe_2について、これまで分離できなかったフェルミ面を全てを観測するとともに、超伝導ギャップの大きさがフェルミ面により大きく異なることを直接的に示した。
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