非破壊強磁場としては世界最高磁場の80テスラを発生できるマグネットを用いた測定において実用的な使用での磁場をいくらに設定するかは決定が難しい問題である。使用できる磁場は大きいほど良いが、マグネットの寿命という点ではリスクを負うことになり、実用的な観点からすると発生可能な回数は20回を上回ることが望まれる。さらに、磁化測定用に改良されたマグネットでは、誘起される渦電流を抑えるために一層目のコイルの補強材を金属であるマルエージング鋼から非金属の高強度繊維であるザイロンに変更しており、この点でもどの程度の磁場発生に耐えうるかを知る必要がある。我々は、以上の点を考慮に入れて実際の測定を通じてマグネットの寿命と信頼性を試してきた。その結果、70テスラ辺りに閾値がある事が判明した。すなわち、70テスラでの測定でも20回の磁場発生が可能であるが、これが67.5テスラまで磁場を下げることにより40回以上の発生が保証されるようになった。この経験的な事実により、すでに阪大強磁場では70テスラまでの磁化測定を日常的に行なえるような実験プログラムで研究を行っている。また、マルエージング鋼により補強されたマグネットはザイロン補強よりも最高磁場発生にはすぐれるものの、電気絶縁性および寿命の点ではむしろ劣っており、65から70テスラの範囲では20回の磁場発生に達することなく壊れてしまう特性が得られた。今後は磁場発生空間を広げるために太い線材を用いたコイルを作製して極低温空間でも70テスラまでの磁化測定が行えるマグネットシステムを開発する予定である。
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