研究概要 |
1.放射光を用いた実験的研究 Mn_3ZnC, Mn_3GaCの磁気相転移に伴う電子状態の変化を調べるために,SPring-8において円偏光変調法によるMn, Zn, Ga K-吸収端のX線磁気円二色性(XMCD)の実験を行った.特に,温度及び磁場依存性の測定から,相転移に起因するスペクトルの強度及び形状の変化を観測した.Mn_3ZnCでは二次の相転移に,Mn_3GaCでは一次の相転移に伴う磁化の変化と比較して,相転移に因る磁気構造の変化とXMCDの関わりを議論した.その結果,軌道磁気モーメントが相転移に深く関与していることを初めて明らかにした. 2.高圧実験装置の開発 低温高圧下での実験のために,冷凍機にダイヤモンド・アンビル高圧セルを組み込んだ装置を設計製作した.テスト実験を経て,装置の操作性と振動に対する安定性を向上させる改良を施した.室温でのFe_4N, Fe, NiのK-吸収端に関する高圧下XMCD実験に成功し,圧力依存性を測定した.DyCo_2のCo K-吸収端XMCDの低温高圧下XMCDを通して実験手法の確立を目指した. 3.Mn_3GaCのGa K-吸収端の高圧下XMCD実験 室温で常磁性状態にあるMn_3GaCに高圧を印加すると,強磁性への磁気相転移が誘起させる.この強磁性状態を確認するために,高圧下でGa K-吸収端のXMCD実験を行った.その結果,室温でも5GPa以上の高圧を印加するとGa原子が磁気的に分極する事を見出した.系統的な実験は今後の課題である. 4.研究成果の発表 第11回X線吸収微細構造に関する国際会議(2000年7月26日〜31目,赤穂)にて,招待講演とポスター発表を行った.講演では,Mn_3MC(M=Zn, Ga)の磁気相転移に関するXMCD実験の成果も報告した.ポスター発表は,6件のベストポスター賞のうちの一つに選ばれた.高圧下XMCDの実験手法について,Fe_4NにおけるFe K-吸収端の結果をNucl. Instrum. Methods誌に発表した.
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