ヌクレオシドドやヌクレオチドの結晶の一時相転移における時間展開の解析を目的とし、1.Na_2UMPおよびNa_2dGMP結晶について、本研究費により平成12年度に導入したCCD検出器を用いてX線回折法により相転移の時間変化の追跡を行った。 (1)Na_2UMPは、水蒸気圧1.4kPa条件下において55℃付近で7水和物から2.6水和物へと移転する。相転移は基本的にはミクロ結晶単位で進行していくが、相転移の移行期に塩基の積層方向の繰り返し周期が2倍に対応する超格子反射が一過的に出現し、相転移の終了と共に消滅することが明らかになった。 (2)Na_2dGMPは4水和物として結晶化し昇温に伴い、無水物に移行するが、水蒸気圧が比較的高い条件(〜1.4KPa)と、乾燥窒素気流下(水蒸気圧0kPa)では、転移温度が異なり、異なる結晶構造をもつ無水物AとBへ転移する。Na_2dGMPでは、特に中間状態は見出さず、ミクロ結晶単位で4水和物から無水物AおよびBに相転移が進行した。また、相転移後の状態について結晶構造解析を行った。無水物Bは、4水和物の結晶から結晶水が抜けて、dGMP分子がそのまま近づく構造となっているのに対し、無水物Aでは、dGMP分子のコンフォメーションに大きな変化がみられると共に、dGMP分子間の水素結合にも改変が起こることが明らかになった。40℃付近では、水素結合による束縛が強くて無水物Aへの転移が起こりにくく、準安定構造としての無水物Bが出現したとみられる。 2.グアノシンは2水和物と無水物間で相転移を起こす。昨年度に引き続き、2水和物結晶についての分子動力学計算を進めたところ、計算時間が800psを越える辺りから、分子層間の水の分子層内への移動や、これをトリガーとした分子層内の10分子程度の水の相関を持った変位などが生じた。これらの動きは、相転移における結晶水の挙動と対応しており興味がもたれる。
|