12年度中に主要な実験装置(主冷却レーザー光源、超高真空装置)の整備を完了し、13年度はこれを用いた冷却実験を行い、本研究の中心舞台となる準安定状態に関する詳細な分光学的研究、ポピュレーション・トランスファーを利用した極低温連続スカラー原子波生成に関する実験的検討を行った。主な成果は以下の通りである。 1.5s^2 ^1So-5s5p ^1P_1磁気光学トラップ中での光ポンプ過程を利用した5s5p ^3P_2準安定状態の低温原子の生成効率の評価を行い、この生成レートとして、5×10^9s^<-1>の値を得た。 2.5s5p ^3P_2準安定状態の特性評価。準安定状態寿命測定手法の開発と、500秒にわたる準安定寿命の決定と300Kの黒体輻射による準安定状態の緩和メカニズムの解明。 3.5s5p ^3P_2-5s5d ^3D_3遷移(波長496nm)による磁気光学トラップの形成、光ポンピングを利用した5s5p ^3P_0原子線の連続生成。本研究で初めて実証した、3状態間の光ポンピング過程を用いる連続原子線生成では、光子反跳温度程度まで2段階冷却をしたうえで、さらに出力状態に別の状態を用意することができ、冷却過程と原子波利用の過程を完全に分離することが可能になる。この特徴は高精度原子波干渉計実現のために非常に有用である。 4.ナノ・ケルビン原子波の生成に向けた中赤外遷移光源の開発。超低速原子線の生成を目指した、中赤外遷移5s5p ^3p_2-5s4d ^3D_3遷移(波長2923nm)によるレーザー冷却(T〜10nK)の検討。高安定・高出力半導体レーザーをポンプ光とするOPO光源の開発・Sr原子の中赤外遷移の観測。原子線の冷却限界を決める、光の反跳温度は、冷却波長の2乗に反比例して小さくできる。本研究では中赤外遷移を利用することで、反跳温度を可視光の1/25程度まで低減するナノケルビン原子線の生成に向けた検討を行った。
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