レーザー光ポンピングにより高偏極希ガスを生成し、核秩序の整った希ガス原子の液体・固体の光学応答などを、磁気共鳴映像・放射光を併用し表面原子に注目してレーザー分光学的に調べ、新たな原理による偏極希ガスの高効率な生成法の開発と偏極率の向上を目的として研究している。 本年度は希ガスの核スピン偏極率を向上させるため、高出力半導体レーザーの狭帯域化を行なった。半導体レーザー(マスターレーザー)に外部共振器を付加することによって線幅を狭帯域化し、そのレーザー光を2台目のレーザーに注入同期し出力光強度を増大させた。現在のところ約45GHzで3Wの光が得られているが、これはマスターレーザーの周波数の長期安定度が悪いためであり、これを改善すると単一モード発振をも得られる可能性を見いだした。しかし現在の発振周波数幅でも、高偏極希ガスの生成効率は大幅に向上した。今後、レーザー開発については、マスターレーザーの周波数安定度を増し単一モード発振をめざすとともに、強度を約20W程度まで強くする予定である。 現在、希ガスとして^<129>Xeの核スピン偏極を、光ポンピングしているRb原子の偏極率を通して間接的に計測し、その偏極率の増大を確認している。本研究の当初の目的である液体・固体希ガスの磁気共鳴計測のため、低磁場中(0.1mT-10mT)の低周波(1kHz-100kHz)NMR装置を製作中である。 このような研究過程で、薄型セル中または高密度なRb原子の電子スピンダイナミクスを観測し、高偏極という条件下で新たな知見を得ることができ、一部を論文で発表している。今後、高密度アルカリ金属原子の電子スピンダイナミクスと比較しながら、核スピン偏極した希ガス凝縮系のスピンダイナミクスを調べる予定である。
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