レーザー光ポンピングにより高偏極希ガスを生成し、核スピン秩序の整った希ガス原子の液体・固体の光学応答などを、磁気共鳴映像・放射光を併用し表面原子に注目してレーザー分光学的に調べ、新たな原理による偏極希ガスの高効率な生成法の開発と偏極率の向上を目的として研究してきた。 今年度は、低磁場(〜10mT)用に低周波(10kHz-10MHz)磁気共鳴装置を製作し、偏極キセノン原子の磁気共鳴信号を観測できるようにした。Rb原子の光ポンピングにより、キセノン原子の偏極率として約1%が得られていることを確認した。このような高偏極率が得られたのは、昨年度開発した狭帯域化高出力半導体レーザーにより、従来より弱い強度のレーザー光でも高効率に光の角運動量を希ガスに移すことができるようになったためである。今年度は、レーザー周波数の安定化・さらなる高出力化(20W)を行い、高効率な高偏極希ガスの生成を試みている。また本研究当初の目的である液体・固体希ガスの磁気共鳴計測や表面吸着偏極希ガス生成のため、Rb原子と分離したキセノンガスの偏極率をモニターしながら偏極率向上の条件を整えている。現在のところ、分離したキセノン原子の核スピン偏極率は、0.1%程度である。 このような研究過程で、高密度なRb原子の電子スピンダイナミクスの偏極率・磁場・原子密度・振動磁場強度依存性を観測し、偏極希ガス生成条件におけるスピンの振る舞いを理論的に説明することができ、その一部を物理学会・学術雑誌などで発表した。
|