マリアナトラフで行なわれた10航海(今年度行なった航海も含む)の地形、地磁気のデータをすべてコンパイルし、人工衛星による重力データもあわせて解析することにより、マリアナトラフの拡大に関して次の点を明らかにした. 1)マリアナトラフは、次の4つの特徴的な地域からなる.(1)リフティング過程である北端、(2)島弧の近くにあり、マグマ供給が豊富な拡大セグメントをもつ最北部、(3)"Bull's eye"パターンのMBA(マントルブーゲ重力異常)と中軸谷がある拡大軸、もしくは、高いMBAと深い中軸谷を伴う拡大軸とが混ざっている中部、(4)EPRタイプの拡大軸をもつ南部、の4つである. 2)マリアナトラフの拡大速度や"Bull's eye"パターンに非対称な拡大が認められ、それには、(1)島弧側へのリッジジャンプ、(2)島弧側への拡大軸のマイグレイション、という2つの様式がある. 3)地磁気異常による海底地殻の年代同定に基づいたマリアナトラフの復元モデルを構築した.その結果、マリアナトラフは、6Maに拡大を開始して、3Maと1.9-0.8Maに拡大の仕方に変化があった. 昨年度のYKO1-11「よこすか」航海においてマリアナ海域に設置した海底電位差磁力計のうち、R/V Maurice EwingによるEW0203航海(4月)、KR02-14「かいれい」航海(10月28日〜11月12日)において計5台を回収した.最初に回収した海底電位差磁力計2台の初期的な解析により、マリアナ島弧火山下には、70kmの深さに電気伝導度の高い領域があることがわかった.現在、回収したすべてのデータの解析を、過去に観測されたデータも含めて行なっている. 本研究により得られた結果(他のグループとの共同研究も含む)を、2002年12月のAGU(米国地球物理連合)秋季大会おいて、招待講演を含む7件の一連の論文として発表を行なった.
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