平成12年度は、主に短周期の磁場変動(数年から数100年)に着目して、コア起源の磁場変動と気候変動との相関メカニズムを調べるための解析を進めた。短周期のコア起源の磁場変動は、厚さ3000kmのマントルを通過して地表で観測される。マントルは3次元的な水平方向に不均質な電気伝導度構造を持つために、コア起源の磁場変動はマントルを通過する際に幾何学的、及び電磁気的に減衰するだけではなく、電磁気構造とのカップリングのためにコア起源の磁場はその形状も変化する。コアでの磁場変動の起源を明らかにするためには、地表での観測から、コアでの磁場変動を抽出する必要がある。本年度はこのような3次元不均質マントルを伝わる電磁場の変動を効率的にシミュレーションするための定式化を行い、プログラムを開発した。マントルでの電気伝導度の不均質が大きいのは地球付近とコアーマントル境界の直上のD"層である。開発されたプログラムを用い、D"層の不均質としては地震学トモグラフィーによる解析結果を用いて、コア起源の磁場変動が地表まで伝わってくる様相のシミュレーションを行った。コアでは磁場は地表で観測可能な動径方向の成分を持つポロイダル磁場と、地表では観測出来ないトロイダル磁場が存在する。今回の解析結果で重要なことは、コアのトロイダル磁場がD"層の電気伝導度不均質によって変換され地表で観測されるポロイダル磁場を生成することである。従ってトロイダル磁場の変動は地表での磁場変動として観測可能である。トロイダル磁場はコアではゾーナルな流れ場によって生成されており、このゾーナルな流れ場は地球回転変動によって影響を受けることから、上記の結果は気候変動によって生じる地球回転変動と磁場変動との間の相関を説明する上で極めて重要な要素となる。
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